館長のごあいさつ

お茶は人の心をいやし、おもてなしの心を表現する飲みものとして世界中で愛されています。人間がいかにお茶に出会い、生活の中に取り入れて楽しんできたのか。その歴史をまずひもといてみましょう。さらに世界各国の暮らしぶりの中で展開した独自の喫茶文化の姿を見てまいります。

中国から渡ってきた日本のお茶は、1200年の歴史を経て、独自の文化を創造しました。そのひとつに茶の湯文化があります。日本の美術工芸、建築造園に大きな影響を与えた茶の湯の世界もミュージアムの中に復元しています。

800年前に栄西禅師が『喫茶養生記』の中に書いたように、お茶は健康を保つうえですばらしい効能があることが、いまや科学的に証明されています。こうしたお茶の魅力をあますところなく発信する拠点としてこのミュージアムが誕生しました。

静岡は、鎌倉時代の聖一国師によるお茶の紹介以来、茶所として悠久の歴史をたどってきました。ことに明治維新の後の牧之原大茶園の開墾により、近代日本を支える茶業の地として、日本一の生産量、流通量を誇っています。先人から受けつがれてきた高度な静岡茶の技術とその伝統に立脚して、このミュージアムはつくりあげられています。

大海原のような大茶園の真ん中に立ち、大井川をはさんで霊峰富士を仰ぐふじのくに茶の都ミュージアムを存分にお楽しみください。

館長  熊倉 功夫